常日頃からお世話になっております。
ケンロクエンです。
おかげさまで第556回です。
コールドスリープ、または冷凍睡眠とも呼ばれる技術ですが、SFでは常連の誰しも1度は聞いたことのある技術ではないでしょうか?
肉体を冷凍、あるいは極低温の冬眠状態にすることで栄養や酸素の供給なしにその肉体を当時のまま保全するという技術です。
その昔のSFでは宇宙旅行といえばコレ!と言われるレベルで使用されていたらしく、星間移動中は全部コールドスリープするから描写無し!なんてことも珍しくなかったそうです。
後にウラシマエフェクト(光速に近い動きをする物体やその内部では時間の進み方が遅くなるよ的なアレ)が提唱されてからは少し立場を譲り、しかしそれでも今なお宇宙が題材の作品では色褪せない輝きを放っています。
ちなみにコールドスリープの原理としてはガチで肉体を凍らせるタイプと肉体を極低温まで体温を下げて冬眠状態にするタイプとがあるらしいのですが、ガチ冷凍タイプは冷凍した時に細胞液が膨張して細胞を破壊、解凍時にそれが流れ出す(お肉を冷凍した時にドリップが出るやつ)というのが全身各部で発生するため難しいんだとか。
一応細胞単位など極少量なら不可能ではないらしく、精子バンクなどで冷凍保存がされていたりはするのですが、肉体丸ごととなると冬眠タイプの方が実現の可能性は高いそうです。
実際に人間を1週間程度であれば冬眠させる技術は存在する模様で、現在も研究が進められていたりするらしいです。
そういう現実のアレコレはさておきまして、コールドスリープですが、みなさんならどう使います?
1番はやはり長期間の移動に耐えるためでしょうか。
SFの定番である惑星間移動などの超長期間、年単位あるいは人の寿命を遥かに超えた期間を要する移動に耐えるためにコールドスリープを使う……これが1番メジャーな使い道でしょうね。
続いては刑罰。
「キサマのせいで母は死に、父は冷凍刑!俺はキサマを追ってこの様だ!!!」
これは機動武闘伝Gガンダムの主人公、ドモン・カッシュのセリフです。
彼の父親であるライゾウ・カッシュ博士は世界の崩壊を目論むドモンの兄キョウジ・カッシュとそのキョウジが操るデビルガンダム建造の罪を問われ冷凍刑というコールドスリープ処置をされています。
普通世界的な危機を巻き起こすデビルガンダムなんか作ったら即刻死刑になりそうなものですが、それがないあたりGガンダム世界、少なくともネオジャパンにおいては死刑制度は廃止されているようです。
結果としてデビルガンダム事件は物語の黒幕によって引き起こされたもので、ライゾウ・カッシュ博士は冤罪だったので死刑制度廃止と冷凍刑の採用は功を奏したわけですが、刑罰としてのコールドスリープはアリなのかナシなのか意見が分かれそうですね。
まずスペース。
ライゾウ・カッシュ博士は何故かクッソデカい部屋にコールドスリープカプセルがポツンと置いてある(しかも脱出装置付き)超豪華なお部屋で冷凍刑に処されていましたが、コールドスリープカプセルだけで冷凍刑が完結することになるならスペース問題はかなり解決しそうです。
年に数回のカプセル点検で済みそうですし、人件費もかなりお安くなりそう……。
しかしながら「刑罰」というポイントではちょっと……と思わざるを得ません。
だって自分は寝てるだけ。
その間ずっと意識があったら地獄もいいとこですが、下手すりゃ寝た…とおもったら目が覚めて数十年後で刑期満了!
起きた時には家族友人みな年老いていたり死別していたりはするかもしれませんし、世間の状況もガラリと変わっているかもしれませんが、自分はしっかり健康体。
下手に懲役くらうくらいなら追加で2〜3人殺して冷凍刑狙い……なんて悍ましい考えが横行しそうな気がしてしまいます。
あとメジャーなところで言えば不治の病の治療なんかもでしょうか?
現代では無理だけど未来でなら!という望みをかけて数十から数百、あるいは数万年の時を超えてコールドスリープする……という話は時折聞きます。
ですが、この手の未来に希望を託すタイプのコールドスリープってだいたいがコールドスリープするところが物語の終わりな感じありませんか?
実際におはよう!今は〇〇年後だよ!君の病気が安全、確実に治療できるようになったから君を目覚めさせたんだ!って作品には俺はまだ巡り会ったことがないので、知ってる人は教えてください。
感染性の病気を治療するためにコールドスリープしたものの、なんらかの理由でその感染源が根絶されて治療技術も失伝。
目覚めてしまったが故に自分は未知(になってしまった)病気をばら撒く根源にして世界に命を狙われる厄介者、しかも治療しないとどの道死に至る……なんて最悪の展開だったらたまんないですね。
俺はそういう話好きですけど。
自分は治療できたけど、その治療方法が安全、確実化に至るまでに数多の犠牲があったとか、せっかく健康体になれたのに遥か彼方の時の流れで共に喜べる者は誰もいないとか、曇らせ闇落ちスキーにはゾクゾクするような展開が目白押しで想像するだけでワクワクするので、コールドスリープによって病を完治させた後の話を書いた作品があれば是非ケンロクエンにご連絡ください。
しかし長期のコールドスリープに付き物なのが、変わり果てた未来に待つ永遠の孤独。
不可逆の未来行きタイムマシンみたいなもんですからね。
惑星間航行やマクロスめいた移民船団でもない限りは基本的に遥か未来でただ1人。
刑罰やコールドスリープのテスター、治療のためのサンプルケースとかでない限りはコールドスリープカプセルの維持を頼めるくらい立場ある人間でしょうが、果たして未来で子孫はカプセルの維持ができるくらいの立ち位置を持っていてくれるのでしょうか?
なんらかの目的を持ってコールドスリープをしたあなたは目覚めの時を迎えます。
あなたを目覚めさせた男は告げます。
本来の目覚めを遥かに超えた想定外の未来であり、あなたの子孫は没落し取り潰し。
放棄された施設の撤去作業中に半ば都市伝説と化していたコールドスリープカプセルが発見されたと……。
未来の知識もなければ寄る辺も無い世界であなたはどう過ごしますか?
うーん、長期的コールドスリープを惑星間航行等宇宙的スケール以外に用いると、どうしてもダークな結末しか思いつかないですね。
そもそも人類が生存しているかもわかりませんしね!
じゃあ短期的なコールドスリープならどうでしょうか?
宇宙戦艦ヤマトにはコールドスリープを睡眠に用いる使用方法が確かあったはず。
コールドスリープで疲れなんか取れるのか?と思って調べたところ、熊などの冬眠する生き物の脳は冬眠中中途覚醒のない状態、すなわちノンレム睡眠を維持するそうです。
要は熟睡状態のまんまなんだとか。
人間の脳が睡眠中浅い睡眠であるレム睡眠と熟睡状態のノンレム睡眠を繰り返しているという話は聞いたことがある人も多いかと思いますが、コールドスリープなら熟睡しっ放し!
コレは疲れが取れそうです!
ついでにコールドスリープカプセルという外敵要因で冬眠状態に持っていくことを考えると「なかなか眠れないなぁ…」なんてこともなさそうです。
寝つきが死ぬほど悪い俺はそこだけでも欲しい!
単純にコールドスリープ中は寿命を消費しないとしたら、1日あたり8時間寿命が伸びるわけですね。
コールドスリープが各家庭にあるくらいの未来という設定で、人の平均寿命が100歳だとしたら、生まれてから死ぬまでコールドスリープカプセルを使い続ければ130歳まで生きられるということに!
黎明期は金持ちばかりがコールドスリープカプセルを独占し、その結果金持ちの寿命はどんどん伸びる。
被搾取者はその状況を許すことができず、後に睡眠戦争と呼ばれる戦争が…ハッ!いかんいかん、また世に混沌をもたらすところでした。
今日はやけにバッドエンドが騒ぐなぁ。
しかし短期的睡眠としてのコールドスリープ、なかなか侮れないものがあります。
ですが当然デメリットもあります。
なんせ代謝が低下しているわけですから、下手に腹一杯食って寝たら朝起きてもお腹いっぱい。
気持ち悪…なんて思いながら通勤、通学するのは少し嫌ですね。
まぁこんなのはまだいい方で、お酒の、アルコールの分解が代謝の低下によって行われないかもしれないのは大問題です。
ベロベロに酔っ払ってコールドスリープ〜、朝起きたらまだベロベロ〜はさすがに洒落になりません。
コールドスリープカプセルにはアルコール検知器設置が義務付けられそうですね。
飲む日はノーマルスリープすればいいのでしょうが、普段コールドスリープに慣れ切った人間がノーマルスリープによる疲労の残った睡眠は耐え難いものがあるでしょう。
まして二日酔いなぞしてしまった日には地獄の苦しみ!
そう考えるとお酒を飲みつつコールドスリープするにはアルコールが抜けると言われる8時間を過ごしてから飲まなきゃならないわけですが、夜の10時に寝るとしたら昼の2時から飲んでなきゃ間に合わない!
いや、昼の2時には飲み終わっておかなければならないことを考えると、ランチタイムにはもう飲み始めないとコールドスリープはお預け。
コールドスリープ実用化の際には酒飲みの肩身はどんどん狭くなりそうですね。
さらなる問題としてはレム睡眠の欠如。
先程熟睡状態のノンレム睡眠を維持できるなら疲れが取れそう!などと言っていたのに舌の根乾かぬうちから一体何を!?と思うかもしれませんが、このレム睡眠が結構重要らしいのです。
そもそも人類なんて天災にでも襲われない限りは基本的に寝首をかかれて死ぬなんてことはない生活を大半の人が日々過ごしているわけですよ。
過ごしてるよね?
なのに浅い眠りなんてなんで必要なんだろう?と思って調べました。
このレム睡眠は記憶の整理や精神の平穏に使われているらしく、その日起きたことなんかを整理している時間なんだそうです。
とりわけ子供には心の成長に不可欠らしく、少ない人生経験の中で体感したことをレム睡眠中に整理することで理解したり、成長したりするんだとか……。
なんとコールドスリープR-18疑惑が出てきてしまいました。
じゃあ大人にレム睡眠がいらないかと言われるとそうでもなく、嫌な記憶を整理編纂することで和らげるなんてこともしてくれているとかなんとか……。
これがよく言われる一晩寝たらなんとかなったの真相……らしいですよ?
なので嫌なことがあった日にコールドスリープでレム睡眠をすっ飛ばすと、翌日似たような嫌なことを経験した途端に心がポキリ!といってしまう可能性があるわけです。
コールドスリープ……なかなか難しいですね。
難しい!コールドスリープという古くから使われてきた題材なのに、これが1番という使い方が全然思い浮かばない!
そりゃウラシマエフェクトでキャラクターは普通に生活してるけど、実際にはとてつもない時間がっていう方法がメジャーになるわけですよ!
しかも俺は全部ラストに闇落ちエンド付けちゃうし!
コールドスリープを題材にしたハッピーエンドの作品、お待ちしております!
現在、汚泥の底日誌ではお便りを募集しています。
今週の募集テーマは「好きなキャラクターの話」
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