汚泥の底日誌

文章力向上と自分の書きたいことを書き殴るためのブログです。

第23回 絆の押し付け、暴走注意

常日頃からお世話になっております。

ケンロクエンです。

 

おかげさまで第23回です。

 

絆、結束、団結…とても綺麗な言葉です。

学生時代は教師から行事のたびに聞いていたものです。

しかし、中にはそれで本当に絆が深まるか?と思うようなこともたくさんあります。

そして納得いかないことも。

体育祭でよさこいを踊らされたり、組体操をしたり。

どうして勝敗に関係ない踊りを練習させられたり、痛い思いをしてピラミッドを作らなきゃいけないのかと思ったものです。

それでもまだそれはそういうものとしてなんとなく割り切って当時は言われるがままやっていました。

 

だが時としてこれで絆が深まる!という思い込みが暴走することがある。

 

俺が通っていた中学では修学旅行は3年生の夏休み前くらいに行われていたのだが、話自体は1年前、2年生の夏休み前くらいから行われる。

学年集会で生徒に候補地が発表され、ここに決まったらこんなことするよ!みたいなのをプレゼンし、生徒からのアンケートをもとに実際行く場所を決めるのが伝統みたいなものだった。

だいたいはお決まりのところに落ち着くのがオチなのだが、部活の時間などに先輩から ウチの時はこんなところが候補に上がって〜 とかを聞いていたので楽しみにしていた。

事件はここから巻き起こる。

 

学年集会当日、体育館に集められてプロジェクターにババーン!と映し出された候補地は4つ。

東京・北海道・沖縄…そして、みんなで富士山登山というものだった。

発表の時点で富士山はないな…という若干の白けた空気が流れたものの、プレゼンが始まるとそうも言ってられなくなった。

 

まず初めに東京のプレゼンなのだが、これがひどいなんてものではなかった。

東京じゃなくて千葉だからディズニーランドは行かない。東京じゃなくて神奈川だから中華街も行かない!

こんな感じのほとんどネガキャンだったと覚えている。

じゃあ東京ならなにができるんだよ?って話だがそういった話はほとんどされなかったと記憶している。

とにかく東京という候補地が開始してすぐに潰れたこととなる。

 

続いて北海道なのだが…これについてはほとんど覚えていない。

というのも当時の俺は北海道=雪という図式で捉えており、雪のない北海道=虚無という失礼極まりない印象を持っていたからだ。

その数年後に北海道の学校に進学し、北海道の冬を体験し、一生分の雪を見たからもう冬の北海道には行かねぇ!と真逆の考え方に至るとは当時は考えもしなかった。

 

そして沖縄のプレゼン。

定番の場所を紹介するあっさりしたプレゼンだったが俺にはザックリ突き刺さり、投票するなら沖縄!と決めるには十分だった。

 

最後の富士山のプレゼンで流れは変わる。

明らかに熱意が違う。

さっきまではド定番のコースを紹介するだけだったのに富士山の時はめちゃくちゃに細かいのだ。

みんなで登れば絆が深まる!ご来光を見れば世界観が変わる!高校はそれぞれ違うところに行って散り散りになるけどそこで培った絆は永遠!絆!絆!きずな!キズナ!!

 

まるで宗教勧誘のヤバいやつみたいに事あるごとに絆というワードが飛び交う。

ほとんどの生徒が富士山プレゼンは敗戦処理投手のように考えていたため、この熱の入れようは不気味なくらいだった。

 

異常なまでに富士山をプッシュする教師陣と冷め切った生徒という異様な空気感の中プレゼンは終わり、各々の教室に戻りアンケートが配られた。

ディズニーランドが失われた東京にアドバンテージはなく、事実上の北海道と沖縄の決選投票だった。

放課後や部活の時間には北海道と沖縄のどちらに投票したかを友人同士で聞き合い、時々東京に入れたやつがいたらマジで〜!?などと盛り上がる…そんな数日間を過ごした。

少なくとも俺の周りには富士山登山に投票したやつはいなかった。

 

数日後、もう一度開かれた学年集会。

みんなワクワクしながら集まった。

北海道?沖縄?どっち?

ワンチャン東京?ディズニーランドはなくても東京も十分魅力的だな〜!

そんなこんなでざわつく生徒に発表されたのは

 

富士山登山決定の結果だった。

 

先程とは違うトーンでざわつく生徒たち。

それを他所に嬉々として富士山登山の説明を始める教師陣。

 

そこで気付く…修学旅行の行き先を決めるアンケート。

アレが無記名投票であったことを…!

 

まさかである。

まさかの捏造が行われたのである。

 

その後のことは上の空でよく覚えていない。

全員が全員失意のままに教室に戻った。

 

もしかしたら俺の周りには富士山登山派がいなかっただけで、大多数は富士山に投票したのでは?などと考えたが、そうではないのが一目瞭然な程の落胆振りだった。

 

当時俺はソフトテニス部…の幽霊部員だったのだが、その日は珍しく部活に参加し、同じく所属していた生徒会長に友達と一緒に訴えた。

これではあんまりにもあんまりだと。

とはいえ生徒会長には生徒会長以上の権限はない。

マンガのように生徒会の一存で全てを決められるパワーはない。

そう、生徒会長には。

 

生徒会長は動いてくれた。

 

数日後に全校に配られた生徒会の広報誌にはアンケートがついていた。

生徒総会開催の承認を問うアンケートだった。

そして俺たちの学年の広報誌には修学旅行の行き先を決める再アンケートも付属していた。

 

生徒総会!それは年に一度行われる生徒主導の集会!だが、実質的には全校集会の延長のようなもので、大きな意味を持つものではなかった!

しかし!校則に記されたとあるルール!

学校創設以来一度として適用されたことのないルールがあった!

そしてその封印が今解かれる!!

 

全校生徒の3分の2以上の承認があれば緊急生徒総会を開くことができる!

 

そして見事承認を集めることに成功!

同時に修学旅行先の希望再アンケートの結果もそのほとんどが北海道と沖縄という結果も判明!

 

ここに教師陣によるアンケート結果の捏造と、緊急生徒総会の開催が決まるという一大事。

そこまで騒ぎが大きくなれば当然彼らの耳にも話は届く。

 

そう、PTAである。

 

何せ彼らは修学旅行の積立金を払う出資者である。

その積立金が教師陣によるアンケート捏造による私的利用をされてるとあらば黙ってはいない。

 

緊急生徒総会にはPTAも参加することとなり、校長含む全教師陣、全校生徒、参加希望の膨大な数のPTAというとんでも生徒総会が実施された。

 

その内容たるやPTAによる教師陣フルボッコタイムと化しており、捏造は本当か?何故捏造をしたのか?金銭の私的流用は犯罪ではないか?富士山?行けよ、その代わり積立金は全額返済で教師陣の自腹な。といった言葉が宙を舞った。

 

教師陣は最後まで捏造を認めず、再アンケートの結果が最初のアンケートと違って困惑している。しかし、再アンケートの結果に従うというスタンス。

 

果てさて決選投票が即日行われ沖縄に決定したものの、PTAの怒りは冷めず、以後教師陣の不手際があるたびに小競り合いを繰り返すこととなる…。

 

緊急生徒総会を勝ち取った生徒会長は絶大な人気を誇り、バレンタインデーはとんでもない量のチョコレートを貰っていた。

すげぇ。

 

その後俺はというと相変わらず幽霊部員かつ不真面目な態度で、そのくせ今回のことを生徒会長に相談した当事者の内の1人なため、一部の教師に蛇蝎の如く嫌われることとなるのだが、それはまた別の話…。

 

次回!ケンロクエン中学バトルダイアリー!

隠され続けた秘密兵器編に…そのうち書く。